汚染水浄化する!? 粉開発…金沢大教授&クマケン工業

 東京電力福島第1原発事故で、放射性物質の汚染水が復旧作業の大きな障害となる中、金沢大の太田富久教授(64)とクマケン工業(本社・秋田県横手市)が19日までに、水処理に活用できる可能性がある「粉」を開発した。水中の放射性物質をつかまえて、沈殿させ、浄化する効果があるという力強いパウダー。太田教授は、「現場で使っていただければ」と、期待を寄せている。

 放射性物質の汚染水は、高線量のものは1〜3号機タービン建屋内外で、推定6万7500トンもあり、復旧作業を阻んでいる。移送場所確保とともに、東電が頭を悩ませる汚染水処理に活用できそうな「粉」が開発された。

 「スーパー・ソリウェル・パウダー(SSP)」と名付けられた粉末。開発者の太田教授は天然物化学が専門。もともとクマケン工業と共同で、工事現場や工場の汚濁水処理剤「ソリウェル・パウダー」などの研究、開発を手がけてきた。原発事故で放射性物質の汚染水が問題になっていることを知り、「役に立てれば」と処理剤の“特別版”開発を決意したという。

 粉には水に溶けたセシウムを吸着し、沈殿する鉱物ゼオライトを配合。さらにセシウムと化学反応し、化合物となり沈殿する物質も加え、二段構えでセシウムをつかまえる。ヨウ素ストロンチウムについても同様の効果がある物質を発見、合成。SSPには数種類の鉱物や化学物質が配合された。

 実験では、放射性ではない天然セシウムを使用。最大10ppm(0・001%)の濃度の水にSSPを入れ10分間かき混ぜると、上澄み液でほぼ100%、セシウムを除去できた。ヨウ素ストロンチウムでも同様。教授によると「原発の汚染水は高線量のものでも、実験の濃度は超えないでしょう」という。天然セシウム放射性セシウムの化学的性質は「全く同じ」ため、応用可能。実験結果等に東電も強い関心を示している。

 実験では溶液1リットルに対し15グラムのSSPを使った。単純計算なら、汚染水6万7500トンにSSP1000トン以上が必要だが、教授によると「大量生産が可能なものだから、対応できる」という。放射性物質を沈殿させれば、キレイになった上澄み液は循環させ、冷却に再利用できる。水をろ過する逆浸透膜と併用すれば、さらに効果があるはずだという。

 「ぜひ現場で使っていただければ、と思っています」と教授。汚染水処理問題に、ひとつの答えを出せる可能性が出てきた。

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(2011年4月20日06時02分 スポーツ報知)