現在進行していること

 新しい物事が発生する時、初めは原型として集中して発生しますが、やがて、この純粋な原型は崩壊します。そして、いずれは、事物の運動の中で、前とはちがうように、不純に、広範囲に再生されていくのです。もっと複雑で、幾重にも錯綜したかたちで。原型においては、本質と実際の事物は一致していた、というか、その最初の事物を通してそれをとらえる理論も発生するので、当然おなじ言葉がつかわれてしまうのです。でも、いったん壊れたあとでは、本質と実際の事物ははなれています。それどころか、かってはそれと反対であったものの中から、生じたりします。
 こういうしくみを哲学者のヘーゲルは、事物の論理として主張しました。
 今の日本を見ていると、階級闘争という今の社会の本質はなお、というか、一時期よりはっきりと、働いているのがわかります。諸主体、組織、集団は、この階級闘争を通じて、くりかえしくりかえし、生み出されようとします。ある時期を過ぎると、生み出される諸主体、組織ははっきりと眼に見えるものになるのですが、今のところは、絶えざる「資本」側と「賃労働」側へのへの分割という運動がある。それは、社会生活の面でも、文化の面でも、職場でも、家庭でも、政治でもあらゆるところで進行中です。どの面が主導的になるのか、また、どのような収斂が、またどのような眼に見える事物になるのかは、未確定です。