時事寸評

 今日は旧暦十二月二十四日、大掃除開始。仕事のあいまの作業になるので、数日かかるのはしかたない。

 
  

         時事寸評

 毎日新聞1月23日付けに経団連会長奥田某のおひざ元、トヨタに新しく労働組合が誕生したとある。
 よく知られていることなのだが、資本主義の発生とともに、資本家の横暴から身を守り、賃労働者の専門職能を守るため、賃労働者たち自身によって組合がつくられ、それは、賃労働者の労働条件向上、搾取への抵抗である賃上げ要求、ストライキ、学習を通じての意識向上、賃労働者にとっての共同体(連帯の場)となった。さらには、資本の横暴の社会を克服する運動、社会主義社会形成の理想主義的運動の中で、政治結社社会党共産党)とは別の、重要な力ともなった。ヨーロッパでもロシアでも、アメリカでも日本でもかつてはそうであった。
 だが、或る時期から、労働組合は、賃労働者をなだめ、逆に、資本主義社会に統合する組織に変ってしまった。せいぜい大企業の恵まれた(会社有のリゾートマンションが使える、廉価でマンションを社宅として使える、余暇で金を出してもらって英語等の勉強ができる、新幹線で通勤しても手当てがされる、等々)賃労働者(ときに「労働貴族」などと称されることがある)の既得権益を守るものになってしまった。個々に自分たちの利害が何であるか、はっきりわかっている組合活動家の努力があることは、忘れてはならないけれども、大勢においてそうである。
 ストライキをすること、労働組合をつくり団結すること自体が異常なこと、やってはならないことであるかのような雰囲気が今では作られている。
 社会主義が正しくないという主張が説得力をもってしまった理由の一つは、この労働組合の保守化、ないしは、賃労働者の体制内化という事実だった。
 それは事実であり、多くの賃労働者が、バラバラの孤立した個人の中に退行している。資本の暴威に直接さらされ、必死の個別的対応で生き抜いている。とても、社会のシステム自体をどうこうなんて、余裕はない。そもそも、今のポジションを死守するためだけにも、競争、け落としせざるを得ないので、団結なんて何になろう。かえって、労働組合なんて、いじめの対象になるだけだ。入ったって自分のためにならず、組合費とられて、動員されて、よいことはもどってこない。へたをすると、思想信条の自由侵害である、自分が応援する気のない選挙のことまであれこれいわれたりする。それに何より、今の自分の矛盾に満ちた会社への適応は、そんなきれい事を言っていてはやっていけない。
 それからいくと、このたった6人の労働組合は、今の労働組合の欠点を知り、初心にもどった物のように思える。「個人加盟」「残業」「正社員とパートの賃金格差の是正」「今の労働組合は労働者の要求には耳をかさなくなった 」「政党支持は自由、選挙運動はしない」「下請け労働者、管理職にも加盟を募る」などは、労働組合の体制内化の頃に、対置された、真の労働組合の在り方にそうものだ。パート労働者にも参加を募るのかわからないが、基本的に、特権的、既得権益擁護ではない。
 ネットを通じての、企業単位でない、個人加盟の労働組合などの試みもなされているが、日本有数の大手企業での、この新しい組合の今後に注目したい。


 以下、記事を引用する。


労働組合トヨタに6人で新結成 既存組合に批判

 トヨタ自動車トヨタ関連企業の労働者が個人加盟する「全トヨタ労働組合」(略称、全ト・ユニオン)が新たに結成され、23日、名古屋市内で記者会見が行われた。
 同労組には、トヨタ自、デンソーアイシン精機、JTEKTなどで働く計6人が参加。執行委員長はトヨタ自の若月忠夫氏。トヨタの下請け会社の労働者や管理職にも加盟を募る。
 同労組は、労働者のメンタルヘルス問題、サービス残業や正社員と期間従業員・パートの賃金格差の是正などを求めて活動していくことを表明。若月委員長は「トヨタ自動車労働組合は、生産第一の立場に軸足を移し、労働者の要求には耳を貸さなくなった。4年連続ベアゼロで、うち3年間は要求していない。存在意義はどこにある」と批判した。
 新組合は愛労連系の西三河南地域労働組合総連合に加盟するが、「政党支持は自由。(選挙支援活動などは)私共から積極的にやることはない」(若月委員長)という。【尾村洋介】
毎日新聞) - 1月23日21時10分更新