見られなかったのは残念だが

 第二次世界大戦中、日本軍が大量破壊兵器研究・実行をしていた731部隊の特集番組で、TBSの楽屋裏が映り、たまたま置いてあった安倍晋三ヒューザーの社長の写真が映ってしまったのだそうだ。TBSは映ってしまったのは偶然で意図的なものではなかったが、申し訳なかったと謝罪しているというのに、これで、産経のネットニュースは、作為的なものだといきり立っている。政府も調査しているという。もちろん、ヒューザーの社長は問題ともされていない、権力者である自民党総裁候補、安倍晋三が映ったことを攻撃しているのだ。

 だが、731の番組に安倍の写真が偶然映ったことになんでそんなに大騒ぎをする必要があるのだろうか。それをきっかけにして、マスコミ統制をさらに強化しようという反民主的なねらいはあるだろうが、それだけではない。さわぎたてる産経も、自民党政府も、731部隊安倍晋三氏は《無関係ではない》ことをよく知っているからなのである。そのつながりをはっきり意識されることは、彼らにとって都合の悪いことなのである。

 長州藩閥、元満州国官僚、元東条軍国内閣閣僚にして、戦後、A級戦犯として拘留されながら、アメリカの占領政策軍国主義の解体と民主化から反共へと変わったために訴追されず、1958年の総選挙では、アメリカからの資金援助で総選挙に勝ち、総理大臣となって、1960年、国民的反対運動を弾圧して日米新安保条約を結び、今に至る対米追従の大本をつくりあげた岸信介は、安倍晋三の誇るべき祖父である。安倍は人脈、血脈においてだけでなく、政治路線も岸の跡継ぎである。
 この岸がつくったのが、日本帝国主義の傀儡国家、満州国(のち満州帝国)であった。彼ら満州国軍閥の人脈は、生き延びて戦後の日本の国家組織の骨となる。そして、731部隊満州国にあったのである。731部隊もまた、アメリカが細菌兵器や化学兵器研究と実験結果の情報を独占するため、その戦争犯罪は隠匿・看過せられた。隊員たちは戦争後は多く、大学医学部、企業にもぐって、非人間的体質は弾劾・批判・克服されることはなかった。その体質が後に、公害やエイズ薬害として噴出したことはよく知られている。