天木直人「さらば外務省!」講談社アルファ文庫 を読む

 もとの単行本は、2003年に出されていて、天木さんが、イラク戦争勃発直前と直後に二回、政府に戦争停止の意見具申(その文面もこの本にのっている)して、首をいいわたされ、外務省をやめた直後に出されたものだ。憲法九条への態度がはっきりしたことと、民主党に対する期待を捨てたことをのぞけば、今日でも通用するとして文庫化したと、文庫化前書きに書かれている。
天木さんは実に人間的な方であるという感じを菅井はもっているが、外務省にいた時から、アメリカ一辺倒の外交に疑問をもち、できる限りで発言も、行動もされてきた方だとわかった。
南アのアパルトヘイトに関する著書があるのはなぜかと思っていたのだが、レバノン大使になる前、人種差別下の南アフリカに対し、名誉白人などとおだてられ、きっぱりと反人種差別の姿勢をもたない日本政府と日本の企業の状況をみて、それを変えることを試みた。
 「遠い夜明け」という反アパルトヘイトの劇映画は菅井も見ているが、それのヒットをしかけたのは、天木さんであったそうだ。その作戦は成功したのである。
 この本を読んで、外務省のイメージがずいぶん変わった。よくも悪くも、人間の組織だなと思った。たてまえや法制度など、いざとなれば大事にされない。あまり勉強していない幹部がいることにもびっくりした。裏金とか、意見書のにぎりつぶしとか、これなら当た前だったのだろう。公の組織という感があまりない。
 日米安保下の従米外交下では、いろいろ勉強して、天木さんのようにはっきりした見解を身につけても、結局しょうがないということか。重要な防衛問題などは、自衛隊アメリカが勝手に話し合って進めてしまうので、外務省はすることがますますなくなってしまう、などというのは、情けなくもコワいなとも思う。
 自衛隊防衛庁が勝手にアメリカと話し合って話をすすめるって、いわゆる文民統治、シビリアンコントロールの逸脱だろう。