東京から地方への人返しは必要

 東京の人口は過剰である。東京には、これだけたくさんの人々に見合った仕事は実は存在していないと思う。人は、地方には仕事がなく、東京には仕事が有るから東京に人が集まるのだと思っているかもしれない。だが、それはちがっている。
根本的には、仕事があるから人が集まるのではなく、お金があるから人が集まっているのである。政治中心であり、権力があり、全国から搾取された富が東京に集まっている。その金の一部はさまざまに浪費される。東京の労働の過半は、その浪費の手伝いに過ぎない。富を生み出す地場産業が、生産労働がないわけではない。生産労働の1分肢としての制御労働がIT産業と呼ばれる虚業の中に隠されて含まれていないわけではない。が、東京に存在する「賃労働」の多くは、経済の立場から見るなら、浪費蕩尽活動にすぎないものである。あるいはそのお手伝いである。
搾取があり、政治中心東京にその搾取された富が偏在するが故に、搾取者によるその富の浪費の複雑なプロセスが生れ、それに寄生するたくさんの「労働」なるものや「非労働」が存在する。
 東京にいれば仕事があるから生きて行けるのではない。東京には搾取された富が集まっているから、東京にいるだけで、生きていけるのである。そのおこぼれを手に入れる言い訳がさまざまな「労働」と呼ばれるものである。はたらかなくても生きて行ける。ホームレスさえ、東京の方が暮らしやすい。「詐欺労働」も東京の方がみこみがある。「詐欺労働」と本質的には同一だが、法律的には合法だとされる,「合法詐欺」もまた。
 首都移転という構想があるそうだ。これももう一つの金儲けねらいであることは疑いない。しかし、東京が政治首都でなくなれば、権力がなくなる。権力がなくなれば富が集まらなくなる。大企業が東京に本社を構える理由も失せる。まちがいなく大量の人口が東京からいなくなるだろう。地方に人返しはでき、東京と地方という言葉さえ存在しなくなるかもしれない。
 仕事があるところ、必要なところに人がいない。必要なところから富が奪われ、不要なところに集まっている。使い道のない金はたとえば、某都知事氏の提唱するようにカジノでもつくって廻してもらうしかない。オリンピックという浪費の合法詐欺もいいかもしれない。その一方で、全国の森林を管理保護する労働は、それをする人がなくなり、ボランティアに頼る?なんてことになっている。農地の荒廃、町(共同社会)の破壊、言うまでもない。
新政府にはぜひとも、全国を見通した、東京からの人返しを実行してもらいたい。それは、東京を「普通」の都市にする道でもあると思うのだ。


携帯に来る山のような、私信に見せかけての広告メールを、ひとつひとつ消す、果てしのない消去労働をくり返しているうちに、こんなことを考えた。携帯電話の向こうには、勧誘メールや、存在しない女性のふりをしてせっせと出会い系にさそうラブレターを創作するたくさんの「賃労働者」たちがいる。私の消去労働には対価もなければ損害保障もない。ネットを通過するメールのかなりの量がこういう偽メール(手紙)に占領されている
という。