ミミア姫

月刊アフタヌーン」の「ミミア姫」の連載のことを書きたい。
「愛人」が、世界の破滅的な運命の中、2人の生きることを書いていたように、
ミミア姫もまた、彼女の生きることを書くだろうと
思っていたのだが、
ミミア姫は一つの前例のない物語をつむぐ作品になりつつある。
神話の創出なのかもしれない。
謎、未決のことは、ミミア姫の運命というよりは、
その物語、神話の行き着くところとなっている。

衝撃的だったのは少し前の、まったく絵がなく、文字だけで描かれた幕間章だった。それは、宇宙を何世代にもわたってそのために飛行してきたらしい大船団の若者たちが、ほとんど勝ち目のない、最後の戦いを前にしての準備をしているところだったが、どうやら、その若者たちがミミアたちの世界に侵入しようとしている鬼らしいことは文中からわかるのだ。
鬼の正体について今のところ示されているのは、
何かしらとてつもなくせつないものである。
それは鬼とは過去の人類であり、ミミアたちの人びととつながった存在であるようだからである。ミミアたちは自分たちの祖先と戦い、それをほろぼすのか。

 その点をのぞけば、たとえば、鬼を日本軍、ミミアたちの国をアメリカとしたとき、西欧側から見たアジア太平洋戦争の構図みたいだともいえる。それなら日本軍とアメリカ軍はともに人間ではあるが、別種の人種であり、だから、敵もまた人間であったという発見(真理)はあっても、それ以上の悲劇性も神話性も謎もありはしない。
 ただ、それには、著者が用意した世界の広がりは大仕掛けすぎる。

 菅井はここ数号、意外な展開と進展の早さに、予想を裏切られつづけているが、それが心地よい。ミミアの世界の行く末がよいものでありますように、そして、ミミアが自分で自分のことを決める時が来ますように。