大阪の選挙の結果をみて

 大阪で、「維新の会」の府知事候補、市長候補が当選した。
 代表の橋下弁護士大阪府民、市民に支持されたということだ。維新の会がはじめて全国レベルで認知されたということになる。
 菅井は、維新の会と橋下弁護士を、ファシズムにすすむ危険のある勢力だと思っている。


 だがもちろん、今の時点でそうはっきりしているわけではない。むしろ、橋下氏の本領は、その民衆的出自だ。親が暴力団であったり、同和につらなるというのは、ネガティブキャンペーンでクローズアップされたが、エリート出身ではなく、諸民出であることを示している。親と子は別なわけだが、その出自、苦労して成り上がって弁護士になったプロセスや、タレント業を利用して政治に打って出たことなど、徹頭徹尾、諸民なのである。だから、同じような面をもって苦労している諸民は支持しやすい。そもそも諸民の中のコミュニケーションが上下、力の強い者がいうことをきかせる、なのであり、橋下の強圧的なスタイルも諸民にはおなじみである。
 だから、諸民に受け入れやすいスローガンを出すし、時には諸民の実際に利益になるスローガンを出したりすることもある。脱原発のように。


 だが、諸民出身なら、諸民の立場に立った政治をするかというと、それはそうとは限らない。
 豊臣秀吉は農民出だった。
 ファシストになるのは、多くの場合、その政治動機が、怨恨、権力慾に起因する人である。諸民の失われている利益を実際に回復しようと、公的に動く人ではない。そして、支持する諸民に想像上のものでもよいから、利益を与えつづけ、政権をとる時点でうまく財界と手打ちして、諸民を切り捨てる。
 菅井には、橋下氏の政治動機はどうみても公的であるようには思えない。


 脱原発で関西財界を敵にまわし、ネガティブキャンペーンをやられた橋本氏であるが、これにこりて、脱原発色を弱めるだろうか。それとも、貫くであろうか。


 政界再編制を言う論者もあるが、大阪で選挙を自分から仕掛けて勝った以上、今の路線を変える必要はないし、むしろ勝ち馬に乗ろうしてすりよってくる者が出てくるだろう。そして、その性格がはっきりするのには、もう少し時間がかかる。


 橋下の力の源泉は諸民のルサンチマンの組織である。そのレベルでは、ネトウヨの心性と同じであり、発展系である。一般的に言うなら、その心的疎外の克服、変革の積み重ねと結合としての「諸民の力」の発生が、それに対する唯一の反撃となる。


 共産党が今回、平松知事を自分たちの狭い利害を越えて支持したことは大きな意味がある。このまま発展するのではなくとも、今後これは本質的な意味で発展させていかねばならないと考えている。