村上春樹新作

村上春樹氏の新作を読んだ。

テイストは、短編のようだ。
読んでいて、市川監督の映画化や、短編「中国行きのスローボート」を思い出した。
ノルウェーの森」も思い出した。

公開インタビューで次のように言っているのだそうだが、そのまんまだなとも思った。

「生身の人間に対してすごく興味が出てきた。人間と人間のつながりに共感、関心を持つようになった。3〜4年前には書けなかったかもしれない」

 個人の心理が深められるとか、謎が解明されるとか、そういうのではなく、かかえたものはかかえたままで、誰かと誰かがつながり、主人公が動き、そして、結果が生じる。

 特に、誤解が解けたとか、救われたとかないのだが、人が動き、その結果人と人がつながり、楽な感じになったかな、と。

 主人公と彼女が結ばれるかどうかはわからないまま、終わる。
 結ばれないと主人公はやばいように書かれているが、それはわからない。ラストにものすごい緊張感がないからそう感じる。

 いやされた、変わったというのではなく、人の状況はそのまま、ある意味で複雑さを抱えたままで、あるつながりができた。

 かんがえてみると、この小説は、たぐいまれな幸せな五人の人間関係があって、それがこわれ、また、つながりをつなぎなおしていく話。うちの一人はなくなっているので、前と同じものになるわけではないが、疎外とそれからの回復みたいともいえる。

 明らかにテーマは個人じゃなくて、人間関係。そう思ってみると新しい。