新聞記事から

やっと正月も終ったばかりだというのに、この寒さ、豪雪の便りも聞く今日この頃である。
北海道や新潟のホームレスの人たちの生活やいかばかりであろう。私が数年前に交友を交した青森県や八戸のホームレスのご仁も無事にこの冬を越しているだろうか? この、近年に類のない寒さ、すぐる年、ささやかな決意を持って青森県を音ずれ、山野を跋渉(ばっしょう)し、極北の聖地にぬかずいた朝のことがきのうのことのように思い出される。やはり、聖地は、北になくてはならぬ。まちがっても、盜・京都のど真ん中に置かれてはならない。汚濁うずまく盜・京都の真ん中では、どんな崇高な霊も、なにやら歪んだ調子を発せさせられてしまわずにはおれないのだ。その地に、盜・京都が置かれる前から成りませる旧い神々でさえ、「膚(はだ)」を焼かれひっぺがされた、過ぐる百数十年前の薩長明治維新政府による暴挙(排仏毀釈はいぶつきしゃく、神仏分離の宗教弾圧)のいたでから完全に回復してはいない。

聞くところによれば、日本に基地を置いている某国の21才の兵士が、横須賀の女性を殺害し、今まで「治外法権」をもって引き渡しを拒むのを常ととしてきた某国だったが、その犯人を日本側に引き渡し、某国立ち合いのもとでの日本警察による取り調べの進行中だとか。被害者の女性は激しくその遺体をキズつけられていたとのこと、殺された女性の心持ちを想像するだに、誠にいきどおりに耐えない。その兵士はすでに、自白しており、本当に死ぬとは思っていなかったと言ったよし。なんという言であることか。
某国基地の著しく集中している沖縄(全沖縄の10%以上が某国軍事施設である。県庁所在地のある沖縄本島ではその割合はなんと、20パーセント近くという)では、ときに生じ、県民のいきどおりの対象となった某国軍兵士による凶悪犯罪であるが、本州でも起ったこと、いかに某国海軍の母艦、巨大空母の発進基地にして、在日某国軍司令部の置かれている所である横須賀という場所とはいえ、事態の深化というべきかと憂う。
1972年、某国占領下から沖縄が日本に返還されることをめぐって、高校学内で交された学友どおしの激論のことを思い出す。あの折、私に多大の影響を与えた一憂国新左翼アナーキストは、「これは沖縄の〈本土〉並み返還などではない、〈本土〉の沖縄化に過ぎぬ。コザ暴動に立った沖縄県民の心を何と思うんだ!」と、血のにじむような声で叫んだ。事態はその後30年、彼の判断の正しかったことを証明している。沖縄と〈本土〉の格差は一向に埋まってなどいない。2005年現在、沖縄の  失業率は日本一である。懸命な工夫、努力はあるのに基地に依存する経済を根本的に変えることができないでいる。某国の影響は、平和条約を結び沖縄より20年も先に独立してしまったはずの〈本土〉の政治権力をいまや、すっかり骨抜きにしてしまっている。

この21才の某国兵士の凶悪犯罪は、今日の某国軍の置かれた状況下では起こるべくして起こったことである、とても殺人事件に発展するとは思えないような一連のいさかいがこの事件のきっかけになった、というその某国兵士の自白内容を伝え聞くにつれ、そう思えてならない。
某国は今イラクで《宣戦布告なき戦争》を遂行中である。日本もその連合軍の一翼を、最高法規違反の「自衛」隊・海外派遣をもって担っている。ただ、この、《宣戦布告なき戦争》の、大義の無いことは、某国内ですでにあまねく知れ渡ることとなり、某国大統領自らも、《宣戦布告なき戦争》の《大義》とされた、「イラクは《大量破壊兵器》を所有している」ことは自分のまちがいだったと認めているほどなのだ。これでは、某国はイラクに軍隊などもう留めておくはずはあるまい、と思うのが、良識ある某国民だけでなく、世界の諸民の常識であろう。ところが、豈(あに)、はからんや、某国大統領は多少のごまかし程度のことを除いては、一向にこの《大義なき占領》をやめようとはしない。もはや、某国海軍中でただ2隻のみとなった、原子炉を搭載しない空母の内の古い方、に所属するこの某国兵士といえども、この事態をよく感じていないはずがない。《大義なく宣戦布告もしない戦争》にかりだされ、はたちの身空を肉弾相撃つ戦場にさらさなければならないことほど、不幸なことはないことは、先の戦争を経験した日本国民なら、わかりすぎるほどわかることである。大義なく、人を小銃で撃ち殺せば殺人なのである。戦争を常態とみなすという、《世界の常識から遅れた憲法》を持ち、普段から銃火器を所有するのが当たり前というおどろくべき某国のお国柄とはいえ、彼らとて人を殺すのがパソコンのキーをおすように簡単にできるはずがない。死の危険に平気で身をさらせるはずもない。大義あると信じ、戦う兵士には最高の敬意と安全のためのあらゆる配慮がされていると信じ得て、はじめて、後顧の憂いなく戦うことができるのである。さらに言えば、万が一戦場にその屍をさらすこととなっても、残された家族には手厚い援助と尊敬が与えられるものと信じ得て、はじめて、戦いに専心しうるのである。
にもかかわらず、大統領自ら大義なきを認め、さらには、高性能防弾チョッキがゆきとどいていれば、戦死した某国兵士の約80%は実は死なずともすんだ、などというふざけた報告をきけば、「しょせん我らは使い捨てか」、と自暴自棄になるも道理。そうしたモラルハザード(徳義心の崩壊)が、イラクへの出動基地と化している現在の在日本・某国軍事基地の所属兵士の間に浸透しつつあることは、多少、広くものの見える、2チャネラーネット右翼諸君以外の、良識ある諸民には明白であろう。
この21才の某国海軍・空母勤務・横須賀基地所属兵士の「衝動」殺人の裡(うち)にある、「徳義心の崩壊」を看取しえず、この21才某国兵士とわが日本諸民たち、とを包んでいる陰うつなる環境に思いをいたさない者は、断じて真の愛国者とはなりえない。