今韓国に起きていること

 韓国では、米軍の削減をめぐって、それに抵抗する勢力が声を揚げている。米韓の同盟を堅持するべきだという趣旨から、米軍にいてほしいということである。削減であって、撤退でないし、朝鮮戦争以来、韓国軍は独立の軍ではなく、アメリカの指揮下にあったのを、韓国に自軍の指揮権をもどすということなのであるが、それでも反対らしい。以前のように、従米反北(朝鮮)の政府にしたいというのである。

 これに関して、思い出されるのは、日本における1960年の日米新安保条約である。その時は、日本が講和条約を結んで、米軍はそのままでは駐留の根拠がなくなり、当然撤退することになるのを、アメリカは自民党の岸を支援、選挙で勝たせた上で、永久に米軍が居座れる日米新安保条約を結ばせた。アメリカは沖縄(今同様に莫大な米軍基地があり、まだ「日本」に返還されていなかった)だけでなく、朝鮮戦争のバックアップ基地になる日本をも自由に使いたかった。新安保の危険性と、岸のうさんくささに日本国民は気がつき、反対闘争は広範な大衆闘争になったが、勝つ事はできなかった。それ以後、日本国憲法は常に日米安保体制によって空洞化されてしまう。今では、外国の軍隊が日本にいるのを生まれた時からそうなので、そういうものだと思い、おかしいことと感じられない若者が増えている。例えば、2チャンネルに巣くうネット「右翼」がそうである。

 もちろん、韓国の今の事態は日本の60年安保とは異なる面もある。日米安保の時は、日本を社会主義(中国、ソ連)を軍事的に封じ込めるための前進基地として使うため、アメリカは撤兵する気は全くなかった。今、米国は安上がりに世界を軍事支配するための、部隊の配置転換をしようとしていて、極東では、日本に集めようとしている。また、朝鮮に対する今の制裁強化路線がこのまま進行するなら、国連の名のもとの侵略戦争が生じる可能性も大であり、米軍は自国兵の損傷をさけるために朝鮮半島を離れようとしているとも言われるから、韓国駐留の必要は米軍の側にはあまりないようだ。
 岸がもともと大日本帝国の傀儡・満州国のボスであり、反米戦争を推進した東條内閣の大臣だったとしても、戦後の岸総理はアメリカ帝国主義の世界戦略にそって動く駒になったのであるが、今の韓国大統領はそうではない。もっとも、それが大韓民国成立以来の従米に慣れた一部の人々の不安となっているのだが。

 確かに、アメリカ側に自国軍大量駐留の要求があまりなく、朝鮮の処理はできれば、中日を中心にして、アジアにまかせたい、朝鮮武力侵略の意志は、イラクの時のようには強くないのだが、韓国に親米政権ができることは望ましいだろうし、日本のようにおもいやり予算、米軍駐留の費用をたくさん出してくれるなら、そんなにへらさなくてもよいと考えるだろう。
 それに、朝鮮非難国連決議の成立過程を見るならば、朝鮮軍事侵略路線を推進しているのは、むしろアメリカよりも日本国家であり、アメリカが考えていたほど、朝鮮は中国に従属ではなかったこともあり、戦争の危険はむしろある。

 全体的に考えるなら、日本の1960年の独立・平和派よりは、韓国の今の独立派(北との和解、民族統一を求める、従米よりはアジアの協力を重視する)は有利である。しかし、世界的な軍事威嚇によって支えられているアメリカ帝国主義の軍事力への怯えは日本国民にも韓国国民にもしみこんでいる。そして、怯えは、毅然とした態度や戦いなしには克服されない。予断は許されない。