無断リンク断想 その2

はてなサヨクということばを目にしたことがきっかけで、自分が日記を書いているはてなという場所について意識するようになった。そうしてみると、携帯から更新機能以外のはてなのほとんどの機能を使っていない自分は、ダイアラーとは言えても、ブロガーということはやはりできないし、はてな初心者なんだなあと改めて思い知らされました。市民資格をとれるくらいの日記は書いてるし、この日記が菅井のインターネット上のメインであるので、はてな市民であることはまちがいないんですが。

どうやら、無断リンクお断りをめぐって、議論があったらしいということがわかって、暮れに一度同じ題で日記を書きました。その時は技術の特性と、倫理(法律ももモラルもひっくるめて)の関係という視点を書きました。
無断リンクお断りの議論は、けっこう、菅井が1年前に考えたことがくりかえされていたな、と思いますし、文化のちがいの問題であるというのも、当たってないことはないなと思うのですが、きょうは菅井が考えていたもう一つの面について書きます。

 それは、インターネットをせっけんする祭り、炎上ということです。これはネット上の暴動のようなもので、初期に菅井が記憶するのは田代まさしを祭り上げたことです。2チャンネルが火元となって、特定のサイトに膨大な書き込みが集中して、そのサイトを機能不全にし、閉鎖させたりするものです。  
このようなものは知らない人はまったくの自然発生のように思うのですが、実は、それをおこしている人々がいるのです。
 まず。2チャンネルにはそのサイトまたはそのサイトに取り上げられているものについての掲示板(スレッド)が複数、立ちます。そして、その人またはサイトについての2チャンネルの技術的特性である匿名の批判、悪口、誹謗、中傷、バリ雑言が次々かきこまれます。それに反対する書き込みされると、つるしあげられて追い出されます。そのスレッドは2チャンネルのスレッドランクの変動制という技術的特性によって、目立つようになりますから、おもしろがったり、憤慨のネタをさがしている2チヤンネラーが次々加わってきます。そして、これまたインターネットの技術的特徴であるハイバーリンクによるその特定サイトへの直接リンクがそのスレッドにありますから、ワンクリックでそのサイトに大量の攻撃者が到着、コメント欄やトラックバック欄に一方的質問、批判、無礼な誹謗中傷が殺到するのです。それに困って削除したり、コメント欄を閉鎖したりすると、その動きは2チャンネルで逐一報告され、どうやったらもっと困らせられるか、おもしろい祭りができるかと作戦会議さえ練られ、場合によっては実名個人情報の特定やさらしの相談さえおこります。そこで意志統一された内容は他の2チャンネラーにも伝えられます。そういう作戦を知らないで、反する動きをしたものには、御丁寧に注意のメールが来たりすることさえあります。スト破りに怒る労働組合幹部、という心境なのでしょう。
 しかし、まつり、炎上を準備するしくみは2チャンネルのスレッドだけではありません。他に特定方面を監視するサイトをつくっている人があり、逐一そのサイトを揶揄引用、もちろん直接リンクもあります。また、その特定サイトのホームページを変更や訂正したことまで、削除されたコメントまですべて保存している保存庫のページや、バスワードつきの秘密相談をするページがあったりします。その全てで直接リンクは使われています。
 わかったことは、それらのスレッド、ウォッチサイト、保存庫、裏ページなどで直接リンクがあることは、2チャンネルからはじまるまつり、大量の人間を誘導して炎上攻撃などを可能にする上で要の役割を果たしているということでした。悪口だって、その量が少なければ対処できます。だが、ある数をすぎれば、それは不可能です。その量と、瞬時の動員は、それらのネット上の装置のつながりと、攻撃サイトに対する直接リンクなしには生じない。
 日本国憲法の平和主義と、過去の侵略行為を日本人として反省するサイトを選別してのまつり、炎上攻撃は、明らかにいじめでもあり、思想信条の自由という基本的人権の蹂躙でした。
 だが、これは、いちいちURLをコピペしたり、題名や人名をグーグルヤフー検索でさがしてそのサイトにたどりつき、ちゃんと全部を読む人ばかりであれば、けしておこらないことです。
 こうした働きをみるにつけ、直接リンクは、リンクされる側の拒否が伝えられたなら、はずすのが当然だと菅井は考えるのです。それはもちろん、マナーであり、モラルである。だが、マナーやモラルに反したことをしていいということはあり得ません。基本的人権を侵害するような行為もしていいということはあり得ません。マナーと法律を分離して、法律に反していないならやってかまわないという主張や、法律に反していても処罰規定がないものなら無視してもかまわないという主張が間違っているのと同じです。
 技術的前提からモラルを導くのはまちがいであることは 1 の方に書きましたが、さらに言えば、インターネットはなんでもリンクだから、直接リンク禁止はなりたたないという主張は、今の過剰リンク状態を生じやすくさせているのが、インターネットの根本性質であるハイパーリンクそのものなのではなく、きわめて具体的な現在の2チャンネルとかブログサーバーとかの、公開ブックマーク等のインターネット上のしくみ(技術)によっているのであり、それらは変わりうるのだということを見落としているのだと思います。