そのまんま東氏、作業着で初登庁

 そのまんま東が宮崎の県知事として初登庁したとき、作業着を着ていた。そういえば都知事だった青島幸男もラフなかっこだった気がする。これはクールビズとかいうのと、似ているようで違っている。クールビズは背広の代わりで、今までなかったものをつくるのだから、新しい商売の種にしているわけだ。だが、作業着など、浅草や巣鴨や新宿にいけばいくらでも売っている。宮崎でも簡単に買えるだろう。誰の金儲けにもならない。
 ただいえることは、作業着の知事でありつづけることは、いまだかってなかったことだ。 青島もそれで通したわけではないし、そもそも放送作家であった青島は、ブルーカラーのの制服である作業着は似合うはずがない。石原も、災害地には作業着姿で立ったことがあるような気がするが、それは儀式のようなものだ。もちろん、石原慎太郎は作家であってブルーカラーではない。
 そのまんま東だって、むしろ、テレビに出ていた時は背広で立っていたこともあるお笑いタレントなのだが、たけし軍団のカラーや、彼のキャラクターを思えば、こうしたかっこは不自然ではない。
 知事室の椅子が自分には似合わないから、普通の椅子にしたいといったことも含めて、殿様の延長として続いている県知事というあり方を否定しようとしているようだ。

 それはやってもみてもよい。東京都がでっかい新都庁を立てて、日本の首都にふさわしい見栄を張ろうとしたのとは正反対の指向だ。見栄は晴れたが、諸民と役所の関係はますます乖離するばかりだ。口で何を言ってもやっていることは天上人である。

 人は、外見で判断されるのだから、作業服を着た知事など相手にされないし、県民にもバカにされるぞ、陳情しても門前払いされる、という声が聴こえてくるようだ。外国の知事とかに会った時どうするのだ、とか。
 そういえば、最初のころ、作業服姿の議員もいた共産党も、今ではみな背広を着ているし、普段はラフなかっこで地元を飛び回っているのに、今の共産党の区会議員も、区議会ではスーツを着るようになっている。
 共産主義社会主義の国では、一時期、背広ではなく、作業着のような服を幹部や議員も着ていた記憶がある。人民服と呼んでいた国もある。朝鮮などは中国よりスーツが多かった気もするが。国連だろうが、外国元首の前だろうが、そのかっこで通していたような。

 たしかに、バカにする人もいるだろう。けっこう多そうな気もする。能力のない息子に、せめて服装や言動だけは、他の人と同じようにしてめだだないように差別されないようにしろ、それが生きる道だと教える親も多いから、知事をとりまく人々がまず反対するかもしれない。観光収入右肩下がりっぱなしの宮崎県だから、むしろできるようなことの気がするのだが。見栄よりも実質である。