売春に対する差別と差別意識

1月28日

売春にたいする差別と差別意識

売春という職業はとても古い。歴史の初期には、それは宗教と密接に結びついていた。のち、分離して一個の職業となるが、長く差別の対象となってきた。
日本はアジア太平洋戦争後の売春禁止法で、売春という職業にかかわる人を解放するという名のもとに売春という職業自体を禁止し、犯罪扱いしたようになった。国家自体が売春を差別しているのだから、多くの人が差別意識をもつのは当然である。その日本国家が戦争中は軍に慰安所(?)なる奴隷的売春施設をやっていたこと、アメリカ占領軍のためにも売春施設を提供していたことは知られている。ちなみに、売春自体を禁止し犯罪扱いしているのは、日本の特殊性であって、世界の常識であるわけではない。
だが、売春行為そのものが差別されてきたのにはいろいろな事情がある。それには、同じく差別を受けてきた他の「賎業」(屠殺業や皮革業や処刑人や)や、女性差別ともつながっている。また、アジアの儒教道徳、西欧のキリスト教イスラム教などはいずれも、性に厳格な制限を課す思想をもっていた。その視点からみれば、売春はよくない行いとなる。(性欲がそもそもいけない。イスラム教ではもうけることすらよくない行いである)
性行為は種の再生産の行為でもあるから、妊娠がつきものである。出産、子育てと結びついている。現代では、避妊技術の進歩により、そうしたことをさける性行為が可能であるようになったが、過去にはそれはむずかしかった。堕胎は生命にかかわる危険な行為だったし、体を傷つける。不特定の人との性行為にならざるを得ない売春では、性病の問題もある。今は医術の進歩があってかなり克服されるようになったが、過去には梅毒その他での売春婦(客である男も)の死亡はありふれたものだった。
男のやる売春も存在するが、あたかも売春は女性のやるもので、男が買う側であるようになっている。そもそも女性の性欲は長らく承認さえされていなかった。江戸時代にこまんという性的に自由な女性がいたそうだが、例外であった。売春という職業に対する差別は女性差別と結びついたものである。
婚前に恋人と性交することさえ、罪悪視されたのはそんなに昔のことではない。そして、傷物になるのは女性の側だと考えられていた。
今の時点にたって、あらゆる職業において、お金で心身の活動を売ることが通常になっている今の資本主義社会で、売春だけを犯罪視し、差別することはおかしいことなのである。それぞれの労働にはそれの特有性があり、問題点がある。犯罪や搾取とむすびつくのは売春だけではない。
精神を尊重し、肉体をいやしいと思う考えがこの差別の背後にある。性欲もまた人間の自然であり、その人間的な充足は、よきことである。人はちんこまんこをもつから人なのである。