政治常識の更新

 小沢氏の愚行のおかげで、政権交代への道はかなりの回り道を強いられることになると覚悟しなければならなくなりました。

 小沢氏は、恥を忍んで代表辞任をふみとどまりました。それは安倍氏よりははるかにましな決断です。失格と、仮合格くらいの絶対的な差です。民主に加わって以来おさえてきたのに、つい出てしまったわがままは、説得に従ったことで止まったとも見えます。古い小沢を払拭した、欠点のある小沢氏が他の、欠点のある同志に受け入れられて、総合力としては強いチームになるという、日本ハムのような形に向かっていければ、まだ民主党政権交代をする能力はあるだろう。なににせよ、アメリカの圧力の中、中東のアメリカ連合軍への給油措置を止めたのですから。

 きょうはいくつかのブログの主張に考えさせられました。

 菅井の日記も参加している「改憲問題リンク」随一の人気ブログ、「喜八ログ」は、小沢氏の辞任撤回にほっとした気持ちを語るとともに、改めて、自民党からの政権交代を実現することが今、一番大切なことだと言っています。それには小沢氏は必要な人間なのだと。喜八さんの思っていたような小沢さんだったら、確かにもっと面白かったなと思います。だけど、自民党出身の小沢さんは、やはり感覚的には同じ自民の福田さんの方が気持が通じやすかったんではないですかね。まだまだ、民主党は、仲間という集団になってはいなくて、寄り集まりなんだと思います。人は生れ過ごして来た人間関係や、感じ方の牽引力は、思想や立場より強いものです。喜八さんのように、日本のこれからを考えて小沢氏を支持する人は多いのだけど、まだ小沢氏の気持ちや意志の支えになるような、頼りになるつながりではないのだと思います。共同実践を重ねること以外に、出自や感覚の違う人々が通じ合っていく方法はないのです。

 そういうことでは、「反戦な家づくり」の明月さんが今日のブログで、小沢氏が今の日本で、アメリカの圧力を一身に受けてきたのであり、事実としてアメリカからの自立を言う我々は、その後ろであれこれ言ってきたが、重圧の中で、テロ特措法延長を葬った小沢氏をどれだけ支えて来ただろうか、と自分のことも含めて言っています。小沢氏が大連立への罠にはまった根本の原因は、アメリカの無形有形の圧力の強さであることはまちがいないでしょう。アメリカからの自立を実現する過程では、常に、必ず最前線、矢面のきびしい場所に立つ人が出てきます。大事なことは、その人を孤立させてはいけない、みんなで力をそこに集めて支えなければならないということだと明月さんは言うのです。

 さて、小沢氏が大連立にふらついた誤りから立ち直ったとしても、政権交代に向けてのスビードがにぶくなる程度なら問題はそれほど大きくないのですが、それ以上に、アメリカへの従属がより深まる方向にならざるを得ないのではないかと危惧するのが、天木直人さんの〈「恥をさらす」ようだが、前言をひるがえしてもう一度書く〉という今日のエントリーです。この題は、小沢さんの辞任撤回の時の言葉を受けてますね。天木さんは、きのう、もうこのことについてはこれ以上書かないとブログに書いていたのでした。小沢氏がテロ特措法にあまり深入りせず、政権獲得前にはアメリカと全面対決するようなことはさけるべきだとアドバイスしてきた天木さんですが、小沢さんはそのアドパイスを受け付けず、原則論〈自身の国連中心主義の持論〉で、突っ走り、自衛隊の海外派遣恒久法までつくると言い出し、引っ込みのつかないことになりかけていました。アメリカの圧力の強さ、国民の支持の思ったよりないさま、民主党の力の不足などで衆議院選挙にもかてなさそうだと弱気になったことがあって、一気に大連立を受け入れて、なしくずしに妥協しようとしたのです。アメリカにつっぱりすぎた、ヤバいということですから、これは、国内で自立の力と意志を高めていこうという方向の逆になるということです。天木さんは、自衛隊海外派遣恒久法に断固として反対する党〈参議院選挙中に言っていた第三の平和の勢力、天木党を思い出しました〉が必要だといいます。戦争をしたい国以外で、事実上の軍隊である自衛隊を派遣してほしいと思っている国などない、といいます。民主党の左派勢力は菅直人を中心にして断固として立てといいます。そして、平和勢力はまとまれと。天木さんの言うようなことは当面どう進んで行くにしても、根本的に正しいです。

 まず、対テロ戦争作戦への燃料供給を再開することになるかどうか、防衛疑獄の解明がどう進めるか、衆議院選挙に自民党を追い込んでいけるかどうかが大きいように思います。自民党の居座りによって止まっている政治ですが、災害対策のこととか、いくつかの法案が通るにしても、本質的には、衆参のねじれが解消する方向を選挙ではっきりさせて行かない限り動くことはありません。燃料供給もアメリカとの対立の始まりですが、イラク戦争への燃料使用もはっきりしてきた今では、再開させることはできないと思います。もっとも、自民党政府は油の代わりに現金を出すとか、アメリカにとって受け入れられる代案を考え出すかもしれません。でも、給油再開はすべきではない。これが、日本の自立による再建、平和立国外交のスタートとなるシンボル的な出来事だと思うからです。

 小沢氏のふみとどまりを良しとする人は直接小沢氏に励ましの手紙を書いてはどうかと思います。読まれないかもしれないが、ブログで支持をするよりは今の時点ではちょいましかもしれない。その時、喜八さんのように本音を書くのがいいんじゃなないでしょうか。
 


 が、その一方で、政治の本当の姿が目に見えてきた気もしています。学校で社会の時間に習っている政治は、日本がすでに民主主義の国になっているというたてまえを僕らに教えています。主権者である国民が政治をコントロールしているというふうに。けれど、僕らの実感は、それをすんなりうけいれられないです。現実の政治を僕らが動かしている実感はないですから。そうはいってもそこまでで、じゃあ、日本の政治がどうなっているのかということはわからないから、建前を言うしかないんです。実は、現実の政治は、財界と特権階層化した政治家・官僚(それらは地縁血縁閥縁人脈でつながっている)の談合で行われているのです。今回の大連立なる独裁政治ねらいが、読売社主ナベツネと中曽根元首相によるしかけであったことはその現れです。その背後にアメリカの強い圧力がある(来日したロックフェラーのことなど)ことも本当です。このことは、陰謀論者が今まで強調してきた文脈の中に真実があることを物語っていると思います。個々の主張はともかく、そういう事態は、いままで隠されてきたのですが、日本の危機に際して、それは、誰の目にも見えるものになってきた。ごまかす余裕も、気もないかのように。数年内に、そのしくみ(支配と非支配の)は、はっきりと認識されるものになるかもしれない。また、そうしなければならないとおもいます。

 以下の記事など、まるっきりそういうこと。「機微に触れた雑談」とはいったい何でしょう。資本家と政治家の隠れた委員会ではないですか。

引用
読売・渡辺氏と「機微な雑談」=福田首相

11月7日1時1分配信 時事通信

 福田康夫首相は6日夜、都内のレストランで、渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長ら報道各社の首脳10数人と会食した。出席者の1人は会食後、会談内容について記者団に「機微に触れた雑談だった。首相は非常に余裕を感じさせた。小沢一郎民主党代表の去就を気にしている様子だった」と語った。
 渡辺氏は自民、民主両党の大連立に向け、首相と小沢氏の党首会談を仲介したとされる。ただ、当の渡辺氏は記者団の問い掛けに「この会は昔からオフレコが原則」と述べるにとどめた。