餃子報道 依存症の独り言氏の見解を読んで

菅井と正反対の立場の依存症のひとりごと氏が、中国で日本企業JTが製造させた冷凍餃子について次のようなことを書いている。

《今回の事件で疑問なのは、冷凍食品は農薬残留のリスクが生鮮品よりもはるかに低いにもかかわらず、農薬による食中毒が発生したことだ。しかも、発生した場所が千葉県と兵庫県(の10人)に限られているのも不思議である。

〈10人の被害者が出た千葉、兵庫両県警の調べでは、問題のギョーザの包装紙には穴などはなかった。商品の外側から注射針などを使って混入した可能性は低く、中国での生産段階で入ったと考えるのが自然だ。

推定できるのは、▽原料である野菜などにもともと残留農薬として付着していた▽工場での製造過程で入った−−の2ケースだ。農林水産省によると、メタミドホスは、加熱調理することで分解され毒性も弱くなる。ギョーザは冷凍前に加熱処理されており、残留農薬の可能性は低いとみられる。

工場での製造過程での混入の可能性が高いが、厚生労働省の担当者は「限られた商品で被害が出ていることを考えると、個々の商品になる直前に混入したのではないか」とみる。両県警の捜査では、メタミドホスは商品のパッケージから検出されている。この担当者は「包装段階が最もあり得る」と話している。(中国産ギョーザ:どこで殺虫剤混入? 中国での包装段階か (毎日新聞))〉

「限られた商品で被害が出ている」「包装段階が最もあり得る」
つまり、誰かが、何らかの意図に基づいて農薬を混入させた、それも商品のパッケージに付着させて、そういう可能性が高いということだ。
日本の食品メーカーの下請けをやっている中国企業は製造技術も高く、安全基準も日本のものに準じているという。であれば、製造現場に農薬が置いてあり、それが不注意によって混入したとは考えられない。

 東京都は31日、回収した冷凍ギョーザについて都健康安全研究センターで検査した結果、有機リン系農薬や、今回と似た症状を引き起こす農薬は検出されなかったことを明らかにした。
これは、農薬が混入した製品がごく一部であることを示している。

問題は冷凍ギョーザを製造した石家荘市の「天洋食品」で深刻な労働争議が起きているということだ。


〈女性従業員の家族によると、工場では労働契約更新をめぐり、年明けから経営者と従業員との間でトラブルが起きているという。1日の平均労働時間は13時間で、月給は1000元(約1万5000円)程度。給与引き上げを求める従業員と経営者側との間で再三交渉が続けられたが、経営者側は賃上げを拒否し、暗礁に乗り上げているという。 (毎日新聞)〉

〈妻が工場で働いているという40歳代の男性は正門前で、「工場の製品の大半は日本向けと聞いている。最近、雇用契約を巡って労働争議があったばかりで、この工場で何が起きても不思議ではない」と話した。 (同)〉

「この工場で何が起きても不思議ではない」
つまり、従業員が製造工程で農薬を混入させた、この可能性が高いということだ。理由は労働条件の改善に誠意ある対応を示さない会社側を追いつめるためだ。》

独り言氏の推測も興味が有るが、推測の一ツにすぎないので、ここで肝心な事は、天洋食品の冷凍餃子のうち、農薬成分の検出されたものは一部にすぎず、東京都のものからは検出されなかったということだ。そして、全国で被害が生じているように思われているが、実際には限られた地域でしか起こっていないということだ。

毎日新聞も独り言氏もそうだが、この問題を論ずる場合、菅井が問題と感じるのは、中国は悪いとする民族差別主義的偏見および、危機をいたずらにあおりたいとする傾向からか、農薬成分が製造後、一部の製品に混入された可能性、とりわけ、日本国内で注入された可能性をはじめから排除していることである。独り言氏は、中国での犯罪の可能性までは考えたようだが、日本でということは可能性さえ論じていない。その可能性を排除した理由は、警察発表で、農薬成分が検出された餃子には穴はあいていなかったとされていることしかない。

どの餃子からも同じ農薬が検出されるのなら、その実物を天洋食品に検査結果とともに送り、問題解明を要求すべきだときのう書いたが、どうやらそんな簡単なことはできないようだ。もしかして、警察の検査自体が再現不可能だなどということはないのでしょうね。

今はっきりしなくてもしかたがない。とりあえず、危険性を最大限チェックするため、売らないのも悪くない。検体からは農薬が検出されなかったとする中国側でも、同じ会社のつくった国内向けのものに販売禁止の措置をとっているようだ。が、その後でも本当はどうなのか、はっきりさせていってほしいのだ。

JTもお詫びではなく、 独自検査調査を含めて、原因解明をきちんとし、被害の範囲もはっきりさせる義務がある。警察と世論が怖いからあやまっておけ、 では困る。

販売していたのは生協が多いと聞く。生協とは、営利企業ではないはずだ。民営化正義論の中で、あらゆる会社は、営利を求めるのが当たり前みたいな言われ方をしているが、生協もNGOも営利追求を目的とする企業ではない。生協が消費者のために活動するのなら、とくに、安いだけでなく、安全な食品を提供する義務もあるはずなのだ。自分達が販売していたものについて売ってしまったものは検査できないにしても、残ったものについて徹底的に農薬があるかを調べてほしい。そして、消費者に公表する義務がある。

独り言氏は、彼の分析によって、事柄が、中国の食品はなんでも危険だとするキャンペーンの一環になるようなものではなく、もっと具体的に複雑な問題の結果であるかもしれないことを明らかにしてくれた。これを菅井は高く評価する。

独り言氏の中国人労働者の犯罪であるなどという推測を菅井は信じないが、天洋食品での賃上げ争議の背景に、日本の輸入企業側の安くせよとの圧力が企業のかたくなさを後押ししていた可能性はあるのではないか。そしてそのさらに背景には、日本の賃労働者たちの賃上げが同様に押えられていることがあるし、日本人は高賃金がいいし残業したくないが、外国人は低賃金でも、重労働でも気にならないという民族差別主義排外主義の狭い心根が日本に広がっていることもあるのではないか。

 この問題についての具体的な解明が更に進展することを望んでいる。