中島みゆきの手

http://www.youtube.com/watch?v=mkh-pwfz73g

中島みゆきの手

 中島みゆきが、吉田拓郎のコンサートにゲスト出演して、
「永遠の嘘をついてくれ」という拓郎に書いた曲を
歌ったのを見てすごいと思った。そのまっすぐに立って
の歌の強さはすばらしかった。のちに、若い頃、中島が
吉田拓郎のファンであったこと、などの話を知って、
再び観たとき、あいかわらず素晴らしい歌だと思ったが、
見え方は少し変わっていた。
 中島みゆきは、むしろ、自分を抑制するように立って
いた。とちゅうで、右手で、左手をおさえるようにして歌っているのは、
動き出してしまいそうな左手を、ないしは体を、そこに
とどめるように押さえているように、今度は見えた。
直立した身体もちょっとかしいだまなざしも、内の状態をじっと押さえている
ようにみえた。
それほどに強い感情を感じた。軽々と立って、かっこよく立っている
ように前は見えたが、爆発しそうな、かろうじて押さえている
はげしいものをそこには感じた。
ステージを去って行く時、コーラスの女の人に手と手をタッチするのだが、前には、やったぜ! というふうに
見えたのだが、今は、ずっと押さえていたものがふれることでついにこらえきれずに
ふきだしていった、という風に感じた。そのエネルギーがつたわったかのように、コーラスのひとはねっしょうする。
 どちらもたかが言葉による解釈にはちがいない。その場にいた人に
何かを感じさせ、ビデオになっても、見る人に感動を与えるある動きが
そこにあった、ということにはまぎれもない。