市橋容疑者についての報道から

市橋さんは戦っている。
何に対して、何のために戦っているのか、わからないが、
戦っていることは間違いない。


つかまったあと、取り調べで黙秘している。
もちろん、すべての人間には黙秘権という権利が保証されているが、
使う人はそれほど多くない。


断食している。
もちろん、ダイエットや断食は健康のためや修行のために普通にやられることだが、
彼の場合はそのどちらでもない。
しかも、強制的栄養補給の注射をこばんでいる。


取り調べに際し、黙秘してると死刑になるぞ、と警察におどされたことを
弁護士に告白し、それが違法であることを教えられると、抗議してくださいと
頼んだ。現に、弁護士は抗議している。


彼は自分を守ろうとしているように見える。
もちろん、自分を大切にすることは、すべての人間のなすべきことである。
だが、死体遺棄という容疑で指名手配されながら、メディアにも警察にも両親にまでも
事実上、殺人犯人としてとりあつかわれているその本人が、
自分で自分を大事にしようとしているのは、まちがいなく強い意志を必要とする。


私たちに報道規制の合間をかいくぐって見えるのは、彼の戦っているということだ。



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《新聞記事からの引用》

リンゼイさんを「亡くなった人」

11月20日8時1分配信 スポーツ報知
 千葉県市川市のマンションで07年3月、英国籍の英会話講師リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)の遺体が見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された市橋達也容疑者(30)の弁護団が19日、千葉県庁で会見し、市橋容疑者がリンゼイさんを「亡くなった人」と表現し、「事件についてもいずれお話しします」と接見した弁護士に話していることが19日、分かった。また、市橋容疑者が「取り調べ中、検事から『死刑もあり得る』と言われた」と話したことも明らかにした。

 弁護団によると、接見は逮捕翌日の11日から毎日行われ、市橋容疑者は、落ち着いた様子で受け答えをしているという。

 検察や警察の取り調べに対しては依然、黙秘を続けている市橋容疑者だが、弁護士に対しては「少しずつ話し始めている」状態。接見の中で、リンゼイさんについて「亡くなった人」という言い方で表現し、事件への言及に関して弁護士は、「話していることもあるし、話していないこともある」としながら、市橋容疑者が「いずれ弁護士さんにお話しする」と応じていると明かした。ただ、リンゼイさんの遺族への謝罪の言葉はいまだにないという。

 市橋容疑者は逮捕から食事を口にしておらず、取り調べに向かう際ふらついたため、16日に最初に栄養剤を注射で投与され、その後、数回にわたって注射を受けたが、「(投与後に)具合が悪くなった。強制的に補給されないといけないのか」と弁護士に訴えた。弁護士は栄養剤の投与は拒否できることをアドバイス。19日の注射は拒否した。

 また、市橋容疑者は18日の接見に弁護団が差し入れていた、取り調べの様子を記録する「被疑者ノート」を持参。弁護士にノートを示しながら取り調べの不満をこぼした。

 15日には、検事から「今のままの態度だと社会に出られない」、「死刑もあり得る」、17日には、刑事から「姉のところにマスコミが取材に行った。お前が黙っているからだ」と言われたという。ノートの文字は乱れておらず「普通の字」で書かれ、淡々とした口調で状況を説明。感情的になることなく、取り調べの手法について疑問を呈したという。

 取り調べに問題があれば申し入れが出来ると弁護士が伝えると、市橋容疑者は「お願いします」と答えた。弁護団は「虚偽の言葉を使った不当な取り調べだ」として同日、千葉県警千葉地検に録音・録画による取り調べの可視化と、事実関係の調査を求める通告書を提出した。



市橋容疑者「『黙っているなら親が死刑に』と言われた」

2009年11月19日21時42分

 千葉県市川市で07年3月、英会話講師の英国人女性(当時22)が遺体でみつかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された市橋達也容疑者(30)の弁護団が「不当な取り調べが行われている可能性がある」として、行徳署と千葉地検に調査を求める通告書を送った。弁護団が19日、千葉市内で会見して明らかにした。

 弁護団の菅野泰代表によると、市橋容疑者は18日に接見した弁護士に「(検察官の取り調べの際)『このまま黙っているなら、親が死刑になるべきだ』と言われた。そういうことを言われなければいけないのか」と疑問を呈したという。

 弁護団が市橋容疑者に取り調べの日時や、内容を書き込むために差し入れたノートには、県警、検察の取調官から「今のままの態度だと社会に出られない」「死刑もあり得る」と言われた、といった趣旨の記載もある、とした。

 また、逮捕後、絶食を続ける市橋容疑者は、ふらついた様子を見せたことから16日以降、栄養剤の注射を受けたことが捜査関係者への取材で判明しているが、弁護団によると、「強制的に注射されなければならないのか」と訴え、19日は投与を拒んだという。

 死体遺棄の容疑者には起訴前に国選弁護人をつけられず、市橋容疑者が両親に頼らない姿勢をみせ、経済的に私選弁護人をつけられない恐れがあることから、千葉県弁護士会が特例として、刑事弁護センターから弁護士6人を派遣、弁護団を結成している。県警などに取り調べの状況を、すべて録音録画するようにも申し入れている。

 千葉県警は「法にのっとり適正な取り調べをしていると思っている」としている。(朝日新聞