百万の太陽

僕は子どもの頃、二年間だけ、NHKの夕方の少年ラジオドラマシリーズを聞いたことがある。
ひとつがSFで「百万の太陽」。その次が、戦国時代かなにかを舞台にした時代劇だった。
「百万の太陽」の前もSFで、そちらは「オリオンのなんたら」という題で、子どもの科学という月刊雑誌にストーリーは連載されていた。(今、ネットでぐぐったら、「ソレマンのくうかんてい」というそれらしいのがでてきたが、きおくがあいまいだ。)そちらはドラマは聞いていなくて、雑誌で読んでおもしろかったので、興味をもった。「百万の太陽」がその雑誌にのったのかは覚えていない。
僕が「百万の太陽」をききはじめたのは、ストーリーの終盤だった。もう、地球は、ロケットをとりつけて、宇宙を飛ぶ宇宙船となってひとまずの危機からは脱していた。銀河連邦のようなものがあって、他の惑星も同じように宇宙船となってだいせんだんをくんでいた。しかし宇宙の危機はさしせまり、逃げる場所も次第になくなっていく。なにしろ、宇宙自体が壊れて行ってしまうのだから、どうしようもない。最後になって、ホワイトホールのようなものを通じて、別の宇宙へ脱出することになる。果たして成功するやら、どんな別宇宙であるのか、わからないまま、壮大な、全銀河人の惑星船団の大脱走となる。冒頭には、キュインキュインといった宇宙空間を思わせる不思議な効果音がなった。
 壮大なスケールのSFだった。まだレンズマンシリーズを知らなかったので、惑星を宇宙船にしてしまうとか、超空間チューブみたいなものとか、いちいちの道具立てに驚いた。
 福島正実作のこのラジオドラマをできることならもう一度聞いてみたいが、どうやら残っていないらしい。残念なことだ。
 それをもとにノベライズした本はどうやら手にはいるらしいので、いつか読んでみようとは思うが、やはり、あのときの放送のあの感じは格別だった。15分くらいで毎日やっていたような気がする。調べてみればわかるだろうが。学校から帰って聞くので、ききそびれた日もあった。
 それに味をしめて、次の作品も聞いたわけだが、やはり「百万の太陽」にはかなわなかったなあ。