マルクス主義と人格の理論 リュシアン・セーヴ

マルクス主義と人格の理論
リュシアン・セーヴ

四章からなっている。第一章が導入、第二章はマルクス主義の世界観の見地から人格理論はどういう位置づけができるか 第三章は人格理論の対象 第四章は人格理論の仮説

まず第一章を読んだ。
執筆時の時代背景。社会主義はまだソ連があり、改革派マルクス主義の展開もあり、ペレストロイカに入るずっと前だった。フランス共産党の役員でもあったセーヴが理論書として問うたもの。弁証法唯物論や、唯物史観など、社会主義の理論と体系を常識として前提できる時代だったからか、そういう叙述になっているのが、今と違っている。読みにくいのはそのせいが大きい。

第一章は、サルトル構造主義の影響がある中、科学としての、そして、社会主義と結びついた人間の科学の必要性と、その困難について書いている。満を持して自分の理論を世に問うということ。マルクス主義スターリンによる体系化をもとにして、諸科学については、そこから演繹的に展開するという、政治主義の誤った科学観を批判否定すること、心理の生理学還元論や心理=生理過程同一論や心理の社会への還元論の批判、意識の対象の実在性の困難などが述べられている。セーヴ自身の見解は二章以降に書かれる。

日本にも主体性論争という、共通する問題が議論されたが、セーヴのこの本をその流れで見ることができる。しかし、日本への影響はあまりなかったのではないか。むしろ、フランスならアルチュセール構造主義的といわれたマルクス主義、日本なら廣松渉の間主体論など、個体性の意義を否定するものの方がはやったような。
やがて、ペレストロイカがあったものの、ソ連は解体、フランス共産党も内部革新というよりはその余波で、変質、セーヴの一石もどこかへ消えてしまったという感じか。

翻訳出版の当時、「時間使用」というセーヴの提起が以外と新鮮だったのを記憶しており、今回手に入れたので読む事にした。以下、つづく。
http://akinorev31.mabulle.com/index.php/2010/04/14/195901-roger-martelli-et-lucien-seve-quittent-le-pcf-mais-pas-le-communisme-14-avril-2010