予想

福島県で、東京電力原発が爆発事故を起こしてから二年がたった。直接事故での犠牲者は少なかった(作業員の人が何人か死んでいる)が、間接被害がどのくらいなのかはまだわからない。爆発直後の放射性のチリを東日本各地では直接かぶったわけだが、吸い込んだ量がどのくらいなのかはわからないし、食品の放射能の測定とその公開に国が責任をもってやらないので、その後の内部被爆がどの程度になるかもわからない。内部被爆による健康障害、遺伝障害がどの程度になるかも医学的にはっきりしているのではない。
菅井は、爆発によるチリをある程度は確実にかぶっているので、個人的な不調のいくつかは、内部被爆のせいではと疑っている。そして、日本全体についても、内部被爆の被害はこれからはっきりでてくるとおもっている。


ソ連が解体されてロシアになって、平均寿命が急激に縮まったとき、それは、ソ連には一応あった社会保障のしくみがこわされたからであり、社会主義の優位な点が証明されたということだと考えた菅井は、もしかして、それがチェルノブイリ事故の放射線障害にもよっているのかもしれないとは、微塵もかんがえつかなかった。


だが、今は、チェルノブイリ事故の広範な広がり、健康障害の事実を知ってみると、その因果もなかったとは言い切れない。


人口はすでに減り始めているが、その傾向は続くし、いろいろな伝染病が思わぬ大流行をつぎつぎ起こすかもしれない。生活習慣病は改善されず、癌も増え続けるのかもしれない。それでも、原発維持派の政権は、それをそれぞれ別の理由に結びつけて、決して原発事故の放射能のせいとは認めないだろう。
日本国籍の人だけでなく、在日外国人の人口も流入を含めて減り続けていくだろうし、東京は体調の悪い人がめだつ町となり、ついには人口がへっていく。だが、それは、成田に大きな飛行場をつくれなかったため、日本全体が上海や香港に対して、田舎になってしまったせいだ。かつては、東京以外の地方都市が中心商店街がシャッター街化したが、日本全体が中国に対して、シャッター街化したのだ。成田に反対した左翼が悪い、というような説明でもつけて、決して原発事故のせいにはしないだろう。
そして、活性化できないこと、元気がないことをしかたないとして、景気のよくなった分をたくわえた大企業は、平然と海外へ出て行くような気がする。

福島県海側の除線もそのころにはがんばったけどだめだった、しょうがない、みな一生懸命やったのだ、とすりかえられる。

きっと、東電くらいはそのときにはもう存在しないだろう、責任はもうない企業におしつけられるだろうが、賠償も責任をとることはない。

もちろん、これは予想である。原発維持派は政権を投げ出すかもしれないし、まじめな処理が行われる国に変わるかもしれない。原発は廃止され、まともな避難、まともな廃炉作業が行われ、国民は自分たちのやっていくことに信念をもって進んでいくかもしれない。だが、今の菅井にはこちらの可能性は具体的にまだ見えない。逆の可能性ならいたるとこに見られる。


そして、仮に政治が一番ましな方向に転換したとして、でも健康被害はまったく杞憂だったとなるとは信じられない。諸民の生活には深刻な問題が待ち構えている。


ネトウヨのお花畑のように楽観していられる人たちはうらやましい。戦争を、強い日本国家を夢見て、日々を送れるのだから。いや、彼らにもそんな余裕はないような気がする。


健康被害に対する私の予想ははずれるとよいとは思う。だが、いろいろな直接体験、間接伝聞、ニュースを見聞きしていると、私はそう思う。そう思って生きている。