<教科書検定>文科省が復活含め見直し検討 集団自決強制

10月1日21時37分配信 毎日新聞

 太平洋戦争末期の沖縄戦で「日本軍が住民の集団自決を強制した」との記述が教科書検定で削除された問題で、文部科学省は1日、記述の復活を含めた見直しを始めた。検定合格後でも、教科書会社が訂正申請を行い文科相が承認すれば修正は可能。渡海紀三朗文科相は「(訂正申請が)出てきたら真摯(しんし)に対応したい」と述べており、教科書会社の自主的な訂正申請を了承する可能性が出てきた。
 同省はこれまで「検定結果は専門家による審議会での審議結果だ」として、検定の撤回を求める沖縄県内の動きを静観する姿勢に終始した。しかし、渡海文科相は「(29日の県民大会に)あらゆる党派が参加されたことは重く受け止めている」と述べ、約11万人(主催者発表)が集まった県民大会を方針転換の理由に挙げた。
 現行の教科書検定制度で検定合格後の教科書を修正する場合、教科書会社が訂正申請をするほか、文科省が訂正申請を勧告するケースがある。しかし同省が訂正申請を勧告した例はなく、渡海文科相も「勧告で撤回することは難しい」との見方を示している。
 今回の検定を巡っても、執筆者が教科書会社に訂正申請を行うよう働きかける動きが出ている。
 80年度検定の「高校現代社会」では、水俣病の原因企業「チッソ」の名前が「営利企業の非難になる」と検定意見が付き、削除されたが社会の強い批判を受け、教科書会社の訂正申請に基づいて復活した。この際、旧文部省が教科書会社に「情報提供」し、訂正申請を促していたとされる。
 81年度検定の「高校日本史」では、「(沖縄)県民が日本軍に殺害された」とする記述に検定意見が付いて削除されたものの、小川平二文相(当時)が「次の検定の機会で県民の気持ちに配慮する」などと述べ、83年度検定で日本軍による殺害の記述が復活したケースもある。
 町村信孝官房長官もこの日、検定問題に触れ、「沖縄の気持ちを受け止め、訂正や修正ができるかどうか。関係者の工夫と努力と知恵があり得るかもしれない」と述べた。【高山純二、坂口裕彦】