沖縄の民衆の政治

すでに、議会レベルでの沖縄の意志は示されていたが、「県民大会」がひらかれ、
そこで、検定撤回と記述回復の決議が採択されたことに注目したい。
直接民主制により立法権を行使したということである。
現国家の法律上の取扱いがどうあれ、これは、ある特定の集会の決議ではなく、
沖縄の意志をあらわす決定である。単なる比喩ではない。     菅井 


引用
《沖縄 集団自決で検定意見撤回求め県民大会 11万人参加
                       9月30日9時56分配信 毎日新聞

教科書検定意見の撤回を求める沖縄県民大会で、会場を埋め尽くす大勢の参加者たち=沖縄県宜野湾市宜野湾海浜公園で29日午後3時2分、本社機から野田武撮影
 太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団自決を巡る文部科学省教科書検定意見の撤回を求める沖縄県民大会が29日、宜野湾市宜野湾海浜公園であり、約11万人(主催者発表)が参加した。超党派の大会としては、約8万5000人が参加した95年の少女暴行事件に抗議する大会を大幅に上回り、歴史認識を巡る沖縄と政府の対立軸が改めて鮮明になった。大会は旧日本軍の命令、強制、誘導などの表現が削除された教科書検定を厳しく批判。検定意見の撤回と集団自決を巡る強制性の記述回復を求める決議を採択した。
 県議会など22団体でつくる実行委が主催。実行委は10月15、16日にも上京し、福田康夫首相や渡海紀三朗文科相に決議を渡す。
 壇上には仲井真弘多知事と41市町村中、首長36人、議長27人が並び、県選出国会議員らも出席した。(以下略)》



《付記》 葛の篭さんのサイトで知った沖縄タイムズの以下の記事、菅井も引用させてもらいます。あきれてしまいます。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200709121300_01.html
2007年9月12日(水) 朝刊 1面

検定 審議実態なし/小委、文科省意見を追認
「集団自決」軍命削除/沖縄戦研究者は不在


 文部科学省が高校歴史教科書の沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」について、日本軍の強制をめぐる記述を二○○六年度の検定で削除させた問題で、検定を担当した教科用図書検定調査審議会(教科書審議会)の日本史小委員会では「集団自決」の記述について審議委員の話し合いはなく、意見も出なかったことが十一日、分かった。文科省の教科書調査官が検定意見の原案を示して説明し、そのまま意見が素通りしていたことが明らかになった。沖縄タイムス社の取材に、教科書検定審議会日本史小委員会の複数の委員が初めて証言した。=教科書検定問題取材班

 日本史小委員会は十人以下の大学教授らで構成され、うち四人がアジア太平洋戦争など日本近現代史の専門家。だが、沖縄戦について詳しく研究した委員は皆無だ。文科省は全審議委員の氏名、所属は公表しているが、担当教科・科目や部会、小委員会の審議内容はこれまで明らかにしていない。

 委員の一人は「日本史担当の審議委員の中に沖縄戦を専門としている先生はおらず、議論のしようがない」と振り返った。その上で「日本史小委員会では『集団自決』に関する検定意見について教科書調査官の説明を聞いただけ。話し合いもせずに通してしまった。歯痒い思いだ」と語った。

 別の文科省関係者も、「日本史小委員会で『集団自決』についての具体的な議論はなかった。『調査官の意見、説明を聞いただけ』といわれればその通り。審議会では学問的な論争はしていない」と認めた。文科省はこれまで、「『集団自決』は日本軍の強制によるものだった」とする記述に対し「沖縄戦の実態について、誤解する恐れのある表現である」と検定意見をつけ、日本軍の強制に関する記述を削除させたことについて、「学術的な検討を得た審議会の決定」と説明してきた。

 伊吹文明文科相は、衆院文部科学委員会で「文部科学省の役人も安倍(晋三)首相もこのことについては一言も容喙(口出し)できない仕組みで教科書の検定は行われている」と答弁、政府の関与を一貫して否定し続けている。

 しかし審議会には検討の実態がなく、文科省から発案された調査意見が追認されただけであることが明らかになった。

政府の責任重い

 山口剛史・琉球大准教授 教科書審議会で審議されずに教科書調査官の発案を追認していたというのは予想通り。さも公平な審議がされたように説明してきた政府の責任は重い。国会で真相を明らかにし、これを機会に公平で開かれた審議会に改め、沖縄戦の正しい記述を取り戻すべきだ。